2018年も終わろうとしています。今年、私が接した英語の本の中から、印象に残ったものを、いくつか選んで紹介してみたいと思います。
今回は一般本、次回は科学関係の本を取り上げます。
(1)善意とは何か?
Educated: A Memoir
Tara Westover (著)
この著者は、厳格なモルモン教徒という宗教的に変わった両親のせいで学校に行ったことがなかったが、頑張って大学に入りました。大学入学後、ナポレオンを知らなかったという。そんな女性がエッセイを書いたところ大学の先生から高く評価されて、イギリスのケンブリッジ大学で学ぶ機会を得ました。そしてハーバード大学でも学び、歴史学の博士号を取得しました。そういう自伝です。現実の話ですから、その著書がニューヨーク・タイムズの2018のベストブックの一つに選ばれたということになります。そこに書かれているのは、変わった両親との断絶です。
オバマ前大統領やビル・ゲーツも印象に残った本だと言っていました。
この女性の両親はその「善意」に基づいて、娘を学校に行かせなかったのだと思われます。しかし、その両親の「善意」が本当に正しいことだったのか。親の「善意」とは何か?両親という「環境」が子供の人生にどれほど影響があるのか。いろいろ考えさせるテーマです。
日本社会においても、例えば地方では地方に留まって人生をまっとうしていけばよいのだから、生徒にあまり刺激的な外部世界を見せないで欲しいという高校の先生がいました。また、女子だからということで勉強しなくてよいという親がいます。また、ポストがないからと、大学院への進学を諦めさせる先生や先輩がいます。
親、先生、先輩の「善意」とはいったい何なのでしょうか。
社会はどのようなことができるのでしょうか。
そして、本人はどう生きればよいのでしょうか。
著者のHP
(2)なぜ人は騙されるのか?
Bad Blood: Secrets and Lies in a Silicon Valley Startup
John Carreyrou (著)
著者はウォールストリートジャーナルのジャーナリスト。「たった血液一滴で多くの病気を診断可能」という技術をうたい、多くの投資を受けたバイオベンチャー、セラノスTheranosの話。CEOのエリザベス・ホームズはスタンフォード大学の学部生でセラノスを起業し、第2のスティーブ・ジョブズともいわれ、マスコミ出演多数だった。ところが、著者は、この技術そのものが詐欺ではないかと疑問を持ち、それを明らかにしていくという実話を書いています。エリザベス・ホームズの特異とも言える能力が際立ちます。映画化も決定しているようです。
日本にも多いですが、中身がないのにプレゼンテーションが異常に説得力がある人、ポジティブ過ぎる人、都合の悪い面は隠して世の中に売り込もうとする人。そして、こういう人たちに騙されてしまう偉い人も多いです。
一つの教訓として、一読に値するスリリングな本です。