わがまま科学者

(元祖版)http://masahitoyamagata.blog.jp と同じです。


米国ボストン在住の神経科学研究者のブログです。科学、教育などに関する雑多な私見、主張。1ヶ月に1度程度の更新予定。
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2030年に研究者のいる世界はどうなっているか?

年始ということですが、今年は2020年、つまりDecadeの始まりです。そこで、今回は、2030年に私たち研究者のいる世界がどうなっているのか、私なりに予想してみたいと思います。
 
1)生物学は数理科学になる
理系の中でも、これまで生物学を学ぼうとしてきた人は、昆虫採集好きの生き物オタクみたいな人が多く、どちらかというと数学や物理学には関心がないという傾向があったことは、一般論として言えると思います。もちろん、生物学者の中にも、数学好きな人はいますので、あくまで一般論です。2030年、生物学は数理科学みたくなっていると予想します。既にその兆候はでていますが、人工知能やデータサイエンスを駆使したコンピュータ生物学がすごく目立つようになりそうです。
 
私が2016年に書いたacademistの記事です。
2)論文はすべてオープンアクセスになる
これもプランSとか、最近の米国のニュースでもトランプ大統領の大統領令が話題になっています。税金を使って研究して発表した論文は、発表と同時に誰でもすべてがみることができるようになる。2030年にはそうなっているでしょう。一般の人がニュースで話題になったものを原著論文で読む。そして、科学研究者も、地方の大学でも大きな研究大学でも、同じように論文を読めるようになる。もちろん、大学でも、研究所でも、自宅でも、カフェでも、旅行先でも、いつでも論文が読めるようになると予想します。
 
The Scientist誌にでていた関連記事です。

一方で、日本語の雑誌のオープンアクセスというのはどうでしょうか。このあたり、研究者がしっかり取り組まないといけない課題だと思います。

 
3)中国が席巻する
中国の科学研究の進歩が著しいです。最近は主要雑誌に中国だけで行った先端研究の論文が多く掲載されています。ICT関係にも大変強い。対照的に日本発の論文は数も減り、何か時代遅れのマニュアル操作を使った論文が増えているような気がします。
 
一方で、中国の科学研究は閉鎖的で、国内だけで閉じているガラパゴス化が進んでいるような気がします。中国は、大陸にあって巨大ですので、「ガラパゴス化」という表現が正しいかどうかわかりませんが、例えば中国の国内雑誌に投稿し、それを中国国内で引用しているというような感じです。米国の警戒感からくる孤立化というのもあります。トランプ政権の行方はまだわかりませんが、少なくとも2030年にトランプ政権でないことは確実です。米国の排他的政策というのは、トランプ政権でなくても、民主党でもそういう傾向が強くありますので、同じ傾向はどんな政権でも維持されるのではないでしょうか。そして、今の香港の状況をみる時、民主的でない一党独裁体制というのが100年後も残っているというのは私には考えられません。ソフトランディングするのか、どうなるのかわかりませんが、国家が情報統制しているような状態で自由な科学研究が発展していくとも思えません。いずれにしても、2030年には、中国の科学研究が更に発展しているのは間違いないでしょう。
 

私たちのやっているFrontiersのリサーチトピックへのアクセス状況。米国、欧州からは沢山のアクセスがあるのに、中国からはほとんどないです。

 

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4)定年は70才になる
若い人たちは、自分たちの身分が不安定なのに、老人研究者の定年が伸びるというと、苦情を言うことが多いです。一方、若い人たちも、いずれは老人研究者になるわけで、そういう視点も重要だと思います。
 
日本では多くの民間企業の定年が70才になっていくことになるのだろうと思います。これは大学や研究所の研究者でもそうでしょう。今は文化勲章や文化功労者のような特別な研究者が大学で70才以上まで何らかの形で研究をしているということになっていると思いますが、2030年になると、おそらくこれはかなり一般的なこととなるのではないか、と予想されます。つまり、現在50才の人はまだ20年近く研究ができるということです。研究できる時間が長くなるわけですから、若い時の研究キャリア形成もこのことを考慮するべきだと思います。例えば、もっと冒険してもよいということです。


5)日本は災害が多発し、研究どころではなくなる?
最後に、地球温暖化の影響でしょうか。大きな台風が来たりして、日本でも災害が増えそうです。ロバート・ゲラー先生なら根拠ないというでしょうが、西日本では南海トラフが気になりますし、東京、関西、中京地区など、先端的な研究施設が多いところも心配です。

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